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沙希の悪戯4-1

第4章
1.男と女
「ごめん、遅くなって…」
優作は、遅れてはいない。
真琴のほうが早かったのだが、優作は真琴に頭を下げた。
「ううん。わたしのほうが早かっただけ…。それより、美咲ママから聞いたんだけど、ケーキ屋さん閉めちゃうの?」
「ええ、ケーキ屋は、もともと社長の趣味みたいなもんだし、久保が辞めたら社員もいないし…」
「でも、優作が手を入れて、いい感じになってきたんじゃないの?」
「売上は伸びてますよ。真琴さん、やりませんか?お店、差し上げますよ」
「くれるの?」
「ええ。うちはもう撤退を決めてるんで、後はただ処分するだけ。厨房機器や什器、備品の処分と物件の原状復帰。もし、そのまま誰かが使ってくれたら、原状にもどさなくてすむから、うちとしてはそれでもう御の字」
「そうなんだ…」
「本気?」
「うん」
「お店どうするの?」
真琴は、“美咲”の店にも顔を出すが、美咲の社員ではない。
元は、美咲で働いていたが、今は、自分の店を持ち、その他にエステシャンの技能講習を行う教室も運営している。
陽一が今、通っているはずだ。
「志保ちゃん、パティシエになりたくて教室に通ってたの。でも、なんか先生に嫌われたみたいで、やめちゃったの」
よくあることだ。
願書には、本名を書く。
もちろん、性別は男。
ところが、やってくるのは写真とは似ても似つかない女。
そんなこと気にしない人もいるが、気にするやつもいる。
「まだ、そうなんだ」
「まだもなにも、ぜんぜん変態扱いよ。何も変わってないわよ」
優作の携帯が鳴った。
ケーキ屋の美穂からメールだ。
「ちょっと、ごめん」
優作は、真琴に断って、メールを受信した。
静流は、もう会社には出ていない。
陽一は、午後には真琴のところに行くので、ケーキ屋は今、実質、パートの美穂によって運営されている。
まぁ、店の方は心配ないのだが、心配なのはコスチューム。
大人の美穂はいい。
問題は、沙希と他の高校生のバイト。
特に沙希だ。
もし、学校で問題にでもなるようだと管理責任を問われる。
優作は、美穂に沙希のコスチュームを送ってくれと頼んでおいたのだ。
画像が表示された。
メイドの衣装。
(大丈夫だ。問題ない)
「店のバイトの子」
優作は、真琴に携帯を渡して画像を見せた。
「あら、かわいい。これ、お店の制服?」
「制服っちゃ、制服だけど…。コスプレなんだ。今日はメイド」
「そうなんだ。じゃぁ、ナースとか女子高生とか?」
「現役の高校生だって…」
「あっ、そうか」
「あら、またメールよ」
真琴が携帯を優作に返す。
沙希からだ。
「今の写真の子から…」
画像が表示された。
(何だ、こいつ…)
不覚にも優作は噴出してしまった。
「どうしたの?」
「えっ、あっ、いえ…」
「何よ。気になるわね」
見せていいものでもないが、見せないのもちょっと気まずい。
優作は沙希が送ってきた画像を見せた。
“おい、鬼太郎 カラオケいつ?”

「カラオケ誘ったの?」
「いや」
「この子、最高。決めたわ、わたしケーキ屋さんやるわ。この子に会いたい」
「確かに…、笑える」
今度は、真琴の携帯が鳴った。
こっちもメールだ。
「ねぇ、武宮静流っておたくの愛人だった人よね?」
「俺のじゃない。本部長の愛人だ。どうかした?」
「うちの教室でエステの勉強するって…」
「彼女が?」
「陽一が連れて来たみたい」
「へぇー、久保が…ねぇ」
「わからないものね。男と女って…」
「だね」
「ねぇ、優作」
「ん?」
「したの?この子と…」
「まさか、高校生だぜ」
「でも女よ」
「ひがみに聞こえるぞ」
「うるさい」
「バイトのことは、オーナーに任せるよ。よろしく」

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